我々は人生の3分の1を睡眠時間に割いているといわれています。仮に1日8時間程度の睡眠を80歳過ぎまで継続した場合、その累積時間は約242,000時間にもなるそうです。なぜ我々人間は睡眠にそれほどの時間を割くのでしょうか。それは「身体の休息」に加えて、「記憶の整理」「体内の修復」などが睡眠中に行われているからなのです。
さて、人はどのようにして眠くなるのでしょうか?
睡眠は生物の進化過程で変化してきました。海中生物時代では、夜と昼のリズムが規則正しく繰り返す環境に適応するため、陸上生物時代では、太陽の光を頼りに日中は活動する、夜は眠るというリズムを刻み進化してきました。現在我々は、1日周期でリズムを刻む「概日リズム=体内時計」の習得によって、意識せずに日中は活動状態、夜間は休息状態に切り替わります。その体内時計をリセットする因子として、光、食事、温度、メラトニン分泌が関わっており、これらの刺激によって眠気が発生するタイミングが変化するのです。また、活動によって疲れたため、眠気が生じることもあるでしょう。
人間は進化の過程で身体機能調整と情報処理のため脳を発達させてきましたが、仕事や運動などで脳が疲弊してくると、その機能は徐々に低下してきます。そこで眠ることによって脳を休ませて機能の維持を行い、体の状態を維持するよう努めています。その他、脳内には「オレキシン」という神経伝達物質があり、これが覚醒と睡眠をコントロールしています。オレキシンが分泌されると覚醒状態となり、一方で分泌が低下すると眠気が生じてきます。このようにオレキシンの分泌量で、覚醒と睡眠の状態をコントロールしているのです。